
メンフィス市内から太陽が姿を隠す頃、ダウンタウンにあるビールストリートは、日の光を追い払うように、電飾を灯し始めた。ここにはわずか2ブロックの区間に数十もの店が並び、連日ライブ演奏が行われている。
この通りぞいに「ハンディ」という小さな公園がある。ブルースの父と呼ばれるW.C.ハンディを記念した公園。彼はこの通りで、「メンフィス・ブルース」など、ブルースの古典となる曲を譜面に書いた人物だ。
アフリカのメロディやゴスペルといった要素が組み込まれたブルースは、綿花畑で働く黒人たちのワークソングとして生まれ、次第に人々が集う場所で歌われるようになっていった。黒人の歓楽街であったビールストリートは、ブルースの発祥地として名を馳せ、B.B. キングをはじめ大物アーティストを輩出、1940年代から50年代にかけて全盛を極めた。
そしてブルースの発展は同時に、エルビス・プレスリーで知られるロックン・ロールや、彼の活躍とほぼ同時代に発達したメンフィス・ソウルなど、さまざまな音楽のムーブメントを生み出していった。
ダウンタウンには、エルビスが録音した「サン・スタジオ」や、彼の邸宅「グレースランド」、ソウルを生み出したレコード会社「スタックスレコード」の博物館が存在する。またビールストリートには、メンフィス生まれの音楽を愛するファンが毎年多く訪れる。しかしストリートが奏でる音色は、過去の栄華を歌い上げるものだけではない。そこには、確かに新しいメロディが流れ始めていた。《詳しくは本誌にて》










